ryukin

日記(すべてフィクションです)

HI-CHEW

ハイチュウ。森永製菓が販売する、チューイングキャンディー。

僕はハイチュウ以外のチューイングキャンディーを知らない。

昭和のオカンがメガドラPCエンジン、挙げ句の果てにはぴゅう太までまとめて「ファミコン」と呼称したように、僕はハイチュウ=チューイングキャンディーだと思っている。

しかもキャンディーってどこがキャンディーなのかも分からない。しばらく食べていないから。

 

僕は先日流行り病に倒れ、無料で3食昼寝付きの14階建てホテルに大阪府で監禁されたのであるが、いかんせんヒマだった。

スマホでニュースを見ていたら、「ハイチュウがアメリカで売れている」という記事があった。気になったので読んでみた。

 

ハイチュウが食べたくなった。何も知見は得られなかったようだ。なぜなら今記事の内容を思い出そうとしたところ、ミジンコ程も覚えていなかったからである。

 

そして1週間後、そんなことをすっかり忘れた僕は、午後3時に僕はホテルから開放され、友人の中島君と大坂を楽しみ、西成の激安ホテルで眠りについた。

 

翌日、アメ村観光し、快活クラブで「よつばと」を3冊読み、僕は別府まで帰るべく、フェリー「さんふらわあ」の乗り場に慣れない地下鉄を乗り継いで向かった。

 

途中、フェリーの中では電子マネーが使えないであろうことに気が付き、財布の中身を確認した。

 

1万円。これでは自販機でカップヌードルが買えないではないか。

 

フェリーに乗ったら、ひとっ風呂浴びたあとに爆睡し、4時半頃起き出し、展望デッキで海風に吹かれながら朝日を拝み、「さみーよ」と呟きながら喫煙所で煙草を一本吸い、自動販売機でちょっと高いカップヌードル(カレー味)

を買ってきて食べるのが好きなのに。

 

崩さなくては。

 

乗り換えの時間に余裕があったので、僕は周りを見回した。

ローソンがあった。タバコでも買おうかな。いや、さっき買ったしいらないか...

 

あっ!

 

ハイチュウだ!

 

買おう!

 

一気に記憶がリフレインした。

ここで買わねば、僕は向こう10年は確実にハイチュウを食べないだろう。

森永製菓の本気、見せて貰おうじゃねえか...

 

そしてぼくは今、またすっかりハイチュウのことを忘れていたのだが、タバコを探してカバンをゴソゴソしていたらハイチュウが出てきた。


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携帯も圏外でやることがないので、こんな文を書いている。

 

包みを剥がすと、銀紙に包まれたハイチュウが出てきた。

このなんかゴチャゴチャしてる銀紙、昔のまんま。


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昔の記憶はいつのだろう?

 

10年ちょっと前。

まだ父と関係がこじれていなかったころ。

冬になると、僕の生まれ故郷、岩手県久慈市にある平庭高原スキー場によく連れて行ってもらった。

 

小学生は学校で申し込み用紙をもらうと、たしか1000円くらいでシーズンパスを買えたのだ。

 

父のトヨタVOXYでスキー場に向かい、一日滑った帰りの車で、まだ少しかじかんでいる手で、父からハイチュウを受け取った。

 

そんな記憶だ。

食べてみた。

記憶の中のハイチュウは硬かった。

 

でも、大阪の地下鉄ホームで買ったハイチュウは柔らかかった。

 

製造方法が変わったのかな?なんて思ったけれど、たぶんスキー場の寒気に晒されて、硬くなっていたのだろう。

 

帰ったら冷凍庫で冷やして、あのときのほぼキャンディーだったハイチュウを、食べようと思う。

 

どんな味がするだろうか。